【世界情勢は地理から学べ レビュー】地理への情熱は感じる。クセは強い

代々木ゼミナールの地理講師、宮路秀作さんの『世界情勢は地理から学べ』を読んだ。
宮路さんは予備校講師という本業に加えて、様々なメディアへの寄稿、書籍の執筆、メルマガの発行など、本当に精力的に活動されている人。書店で「面白そうだな」と手に取った地理本が、気づけば何冊も宮路さんの著作だったりしたこともある。
個人ホームページを見ると、地理への情熱がひしひしと伝わってくる一方で、なんかクセの強そうな人だなあって感じ。
そんな宮路さんの最新作を、忖度なくレビューしたいと思う。
タイトルと内容のズレ
肝心の本の内容だけど、正直なところ「世界情勢は地理から学べ」というタイトルの意味がよくわからなかった。
どの部分が「地理から学べ」なのかがよくわからん。地理的な視点で世界情勢を読み解くとはどういうことなのか。僕がざっと流し読みをしたからかもしれないけれど、核心部分が見えてこなかった。
でもたぶんこの感覚は間違っていないと思う。本書は書き下ろしではなく、宮路さんのメルマガの文章をまとめて書籍化したものらしい。
たぶんだけど、出版社側の「世界情勢×地理というコンセプトで本を作りたい」という意向と、元々のメルマガのコンセプトが一致しなかったんだと思う。メルマガという「断片的な情報を楽しむ媒体」を、一つの強いコンセプト(世界情勢×地理)で強引にパッケージ化したために、全体として何が言いたいのかがボヤけてしまった。
結果的に、世界各地域についての知識や事実が次々と紹介されるけれども、全体として何が言いたいのか、「地理から学べ」とは何を意味しているのかがつかめない書籍になっちゃったんじゃないかな。
興味深いけど面白くはない
中身には、世界各地域に関する様々な知識や事実が書かれている。内容自体は、その国・地域に興味がある人が読めば面白い話ではある。でも、「うお!このテーマ面白そう!」って引き込むための導入部分の作り込みがイマイチ。
これも宮路氏の興味・好奇心から書かれたメルマガが元になっていることが関係しているんじゃないかな。
本人は各地域のことを面白いと思って書いているけれど、それがなぜ面白いのかをうまく伝えきれていないというか。知識が大量に書き込まれている一方で、その「急所」が示されないから、読者は情報の波に飲み込まれて、「……で、結局どういうこと?」ってなっちゃうっていう。
とにかく終始、著者本人の「面白い!」という気持ちが強すぎて、読者を置き去りにしている感じがする。
知識や事実が大量に書き込まれていて、興味深い内容も少なくはないんだけど、それを読者に読ませる工夫があまりないというか、相手を引き込む工夫がないというか。本の冒頭の文章からそんな雰囲気(=読者置いてけぼり感)を感じて「この本、クセ強そうだな・・・この著者は我が強そうだな・・・」って不安になったんだけど、読み進めてもやっぱり同じことを思った。
正直ぶっちゃけると、この人の他の著作でも同じことを思ったことがある。たぶんだけど、宮路さんはそのあたりの「相手に面白いと思わせる」ってのをやや苦手としているんじゃないかな。
僕自身もそうなので、気持ちはよくわかる。教員ってそうなりがち(=自分だけ面白いと思っている話をしがち)だからね。
いろんな意味で学びになる本だった

ということで、おすすめできる書籍かというと微妙。
地理への情熱は十分に伝わってくるし、元社会科教員の僕にとっては面白い知識・事実が書かれていて興味深い内容の本なんだけれど、宮路さんの情熱を読者と共有するにはもう一工夫(ってかもうちょっと時間と作り込みが)必要だったんじゃないかなあと感じた一冊だった。
「相手を引き込む伝え方」の難しさを反面教師として教えてくれるという意味でも、非常に学びのある本だった。
「地理の小ネタ集」や「特定の地域に関する雑学」としてパラパラと拾い読みする分にはいい本だとは思う。










