「簿記をやってるけど、償却原価法がよくわからん!なんでこうやって解くのかわからない!暗記するしかない!」っていう人(商業科の高校生・商学部の大学生)向けに、
- 償却原価法とは何なのか?
- 償却原価法を使う社債に関する問題の解き方
について説明します。
そもそも簿記とは?
会社の財務状況を報告するための決算書を作る作業のこと。
財務状況=どれくらいお金を持っているか?どれくらいお金を使ったか?など
なんで決算書を作るのか?
会社は毎年、「1年間の活動はこんな感じでしたよ!今の状況はこんな感じですよ!」ってのを報告しなきゃいけないからです。
ちゃんと正確に報告をしないと、
- 税務署から「オマエ、納める税金をチョロまかしてるんじゃねえだろうな」ってニラまれるし、
- お金を貸してくれる人・お金をくれる人が「この会社にお金を渡しても大丈夫だ!」って判断できません。
償却原価法のベースにある考え方
償却原価法のベースにあるのは、「一度にまとめて受け取ったものは、それが影響する期間(年数)で割って、毎年ちょっとずつ決算書で報告するべき!」っていう考え方です。
どういうことかというと。。。
例えば、お小遣いをこうやって渡されたとします。
- A君:4月〜9月は5,000円、10月〜3月は10,000円もらった
- B君:「1年分のお小遣いだよ」ってことで4月にまとめて120,000円もらった
ここで、A君とB君がお互いに「4月のお小遣いはいくらだったか?」を報告しあうとします。
A君は「5,000円もらった」でOKですよね。
じゃあB君が「120,000円もらった」って報告したらどうでしょうか?これだと、ちゃんと正確に報告しているとは言えない感じがします。確かにお金を受け取ったのは4月だけど、120,000円は「4月のお小遣い」ではないからです。
そう考えると、
B君は4月のお小遣いとして「120,000÷12=10,000円もらった」
って報告した方が、実態をちゃんと表していると言えます。だってB君は「12ヶ月間のお小遣い」として120,000円もらったわけなので。
他の月に関しても同様に考えると、、、
例えば、B君の5月のお小遣いは「(実際には5月にお金を受け取ってはいないけど、)10,000円」って報告するべきですよね。
んで!
つまり、「一度にまとめて受け取ったものは、それが影響する期間(年数)で割って、毎年ちょっとずつ報告するべき!」ってことです。
この考え方が、償却原価法のベースにある考え方です。
会社は毎年、決算をちゃんと・正確に報告しなきゃいけないので、何かをまとめてもらった時は特別な計算(→償却原価法の適用による評価)をすることになるわけです。
ってことで、最後に練習問題に即して説明します。
償却原価法を使う社債に関する問題
問題
A会社は下記の条件で社債を平成○年4月1日に発行して、全額の払い込みを受け、払込金は当座預金とした。
発行条件
- 額面総額 ¥40,000,000
- 償還期限 10年
- 利払いは年2回で小切手を振り出して行う(利率は年6%)
- 払込金額 ¥100につき¥97
(1)発行時の社債勘定に計上する額
(2)第1回目の利払いに際して、支払う社債利息の額
(3)第1回目の決算(平成□年3月31日)に際して、償却原価法の適用による社債利息の当期配分額
「社債」とは?
会社がお金を借りる時に発行する債券(「10年後に¥40,000,000返します!」って書かれた証明書)のこと。
「額面総額¥40,000,000」とは?
債券が償還期限を迎えた時(10年後)に、その債券を持っている人は¥40,000,000受け取れるよ!ってこと。
「償還期限10年」とは?
会社は10年後に額面総額に書かれた金額を払わなきゃいけないよ!ってこと。
「利払いは年2回で小切手を振り出して行う(利率は年6%)」とは?
「利率は年6%」の意味
「額面総額 ¥40,000,000」の6%を、毎年、債券を持っている人に支払うよ!ってこと。
つまり、¥40,000,000×6%=¥2,400,000が1年間の利子で、これを償還期限を迎えるまで(=10年間)払いますよ!ってこと。
「利払いは年2回」の意味
1年間の利子¥2,400,000を年2回に分けて払いますよ!ってこと。
つまり、¥2,400,000÷2=¥1,200,000ずつ払いますよ!ってこと。【(2)の答】
ちなみに、社債はこんな感じで「本券」と「利札(りさつ)」の2つから構成されています(※利札がないものもあるけど)。利札はクーポンとも言います。マックの紙のクーポンみたいな感じ。
んで、今回の問題の債券では「利子を年2回、10年にわたって払う=合計20回利子を払う」ことになっているので、¥1,200,000を受け取れる利札が20枚、本券にくっついているってことです。
この社債(=本券+利札)を持っている人は、¥1,200,000の利子の支払いを20回受けられるわけです。
払込金額¥100につき¥97とは?
「額面総額¥40,000,000」の社債を、¥40,000,000のままじゃなくてちょっと割引して売ったよ!ってことです(割引して売ることで社債が売れやすくなるから、だと思えばOKです。社債を発行する会社はとにかくお金が欲しいから、割引してでも売りたいわけです。)。
んで、計算すると、¥40,000,000÷100×97=¥38,800,000
つまり社債を発行した会社は¥38,800,000受け取った!ということになります。【(1)の答】
割引して発行したので会社は損している!(→償却原価法)
会社は社債を発行することで、
- ¥38,800,000借りて
- 10年後に¥40,000,000返す(償還する)
ことになりました。割引して売った結果、発行時に借りた金額と10年後に返す金額にズレが生じることになったのです。
これって、「¥40,000,000-¥38,800,000=¥1,200,000の利息を10年間にわたって負った」と解釈することができますよね。つーか、そう解釈してください!
となると、「12ヶ月間のお小遣い」として120,000円もらったB君が「4月のお小遣いとして120,000円もらった」とは言えないのと同じで、
「¥1,200,000の利息を社債発行時に(=1年目で)負った」と評価するのは不適切です。
償還期限は10年間で、10年間にわたって¥1,200,000の利息を負ったと解釈した方が実態に合っているので、償却原価法の考え方に基づいて、
¥1,200,000÷10=¥120,000が毎年の社債利息だ!って決算書に書くことになります。【(3)の答】