「もし子供が帰ってこない、遅くて帰ってこないなって心配になっていろいろ探すけど、結局見つからなかった時に学校に電話するのがたぶん親だと思うんですけど、それも対応してくれないってことですか?」
「えー、それ寂しくないですか」
「だって『ごくせん』観て育ったでしょ、みなさん『金八先生』観たでしょ」
「気持ちは分かりますけど、もっと別に減らせばいいところがあるじゃないですか。そこじゃないと思います。」
こんにちは。元教師のもちお(@softenisuke)です。
上記の文章は、「学校が留守番電話をつけて、勤務時間外は電話に出ないようにする」ことに対する、タレントの若槻千夏さんの発言です。
この発言は、2019年7月21日放送のnewszeroの中で現役小学校教員とタレントが議論する中で出ました。
https://www.youtube.com/watch?v=82zDEwk0rXM
発言の背景は、教員の長時間労働の深刻化。
「保護者との勤務時間外の電話対応が、教員の大きな負担となっている」という話は、学校教育界で結構話題になっていました。
そのような中で、若槻千夏さんが上記の発言をしたため、ネットでは批判の声がたくさん上がり、大炎上しました。
今回の記事では、若槻千夏さんの発言を深掘りしつつ、
学校の勤務時間外の電話対応
に関して書きます。
ちなみに、若槻千夏さんは2019年7月22日に、自身のインスタグラムで謝罪コメントを発表しています。
若槻千夏さんのことを非難するよりも、「学校と保護者は今後どうすればいいのか?」に着目したいと思います。
学校で勤務時間外の電話対応は実際ある?
まず、勤務時間外の電話対応が本当にあるのか?についてですが…実際にあります。
保護者との電話に関しては、勤務時間内よりも勤務時間外の方が多いのが実態だと思います。
ちなみに、学校の勤務時間は、
8:00頃~16:30頃
です。
実際には、この勤務時間の中に休憩時間が60分設定されています。
(設定された通りに休憩するのは不可能ですが)
勤務時間外での電話は、大きく2種類に分かれます。
- 学校が保護者にかける電話(それに対する、保護者の折り返し電話も含む)
- 保護者が学校にかける電話(それに対する、学校の折り返し電話も含む)
①は、生徒指導の報告に関する電話が多いと思います。
②は、学校への問い合わせや、いわゆるクレームに関する電話が多いと思います。
学校で勤務時間外の電話対応が生まれる理由
これには、大きく2つの理由があると思います。
- 教員が、日中に保護者に電話をかけてもつながらない
- 保護者が、日中に教員に電話をかけてもつながらない
①は、「保護者が働いているために、教員が保護者に電話をかけても連絡がとれない」という意味です。
教員は、たいていは
- 授業の合間の休み時間(10分程度)
- 授業がない空き時間(50分程度)
に電話をかけることが多いと思います。
が、その時間に電話をかけても、働いている保護者と連絡がとれるとは限りません。
②は、「教員が授業などで職員室不在のことが多いために、保護者が教員に電話をかけても連絡がとれない」という意味です。
- 保護者が、着信や留守電に気づいて、仕事の合間に学校に折り返し電話をしたとします。
- また、折り返しに限らず、連絡をしたいことがあって学校に電話をしたとします。
が、その時には教員が授業で不在、ということは結構あります。
このように、
教員も保護者もお互い日中は忙しいため、電話で連絡を取ろうと思ってもすれ違いが起きます。
そのため、結局はお互いの時間的余裕が生まれた17時以降(勤務時間外)に電話連絡をすることが増えます。
これが、勤務時間外の電話対応が多くなる理由だと思います。
学校で留守番電話を設置することの効果
留守番電話を設置することで、
保護者が学校にかける電話
に、勤務時間外で対応する必要がなくなるからです。
そうすると、昨今話題になっている教員の長時間労働が緩和されることにもつながります。
実際に、私立の学校では留守番電話を使っているところもあります。
とはいえ、学校に留守番電話を設置したとしても、
- 教員が、日中に保護者に電話をかけてもつながらない
- 保護者が、日中に教員に電話をかけてもつながらない
という問題が解消されるわけではありません。
なので、留守番電話の内容を確認して翌日に保護者と連絡を取ろうとしても、連絡を取り合えない可能性はあります。
しかし、すべての保護者が毎日働いているわけではありません。
そう考えると、留守番電話の設置は、教員の負担軽減をうながす一定の効果があると言えそうです。
留守番電話への反対意見(若槻千夏さんの発言も参考に)
一方で、勤務時間外の電話を学校が留守番電話で対応することに対しては、反対意見もあります。
- 「だって勤務時間内に電話しても連絡取れないでしょ」
- 「緊急で連絡を取る必要がある場合、どうするの?」
- 「学校・教員はいつでも子供のことを考えてよ」
- 「長時間労働は分かるけど、先にやるべきことがあるでしょ」
- 「長時間労働って言うけど、そんなの学校だけじゃなくて企業もだから」
それぞれの意見について、簡単に解説します。
①「だって勤務時間内に電話しても連絡取れないでしょ」
先ほども書いた通り、日中に教員と連絡を取りたくても、授業などで連絡を取れない場合があります。
「だからこそ先生に時間の余裕がありそうな夕方以降に電話してるのに、それを留守番電話って…それはないでしょ」
という意見です。
②「緊急で連絡を取る必要がある場合、どうするの?」
勤務時間後だとしても、緊急で連絡を取る必要があるかもしれません。
例えば下校中に命に関わる事故が起きた場合、それを「勤務時間外だから」という理由で対応しない、というのでOKなのか?という話です。
(下校中の事故は、学校も責任を負うべきなのか明確にしにくいので難しい問題なのですが…)
とはいえ、実際にはなにが「緊急」にあたるのかの判断は困難です。
③「学校・教員はいつでも子供のことを考えてよ」
若槻千夏さんの発言の根っこにあるのは、この感情だと思います。
『金八先生』や『ごくせん』などで描かれた教師のあり方を、学校の教員に期待するということです。
もしくは、「学校なんだから、いつでも対応してよ」という感情もあるかもしれません。
とはいえ、勤務時間外の労働を強要してOKということにはなりません。
④「長時間労働は分かるけど、他にやるべきことがあるでしょ」
若槻千夏さんも、最後の方で言っていました。
長時間労働を緩和するための策として、留守番電話よりも他にできることはあるんじゃないの?という思いです。
実際、他にやるべきことがあるのは事実です。
⑤「長時間労働って言うけど、そんなの学校だけじゃなくて企業もだから」
教員の長時間労働の問題に対して冷めた目で見ている人もいますが、その人の根っこには
「いやいや、会社で働いてる自分だって長時間労働で大変だよ。」
という思いもあるかもしれません。
ただ、だからといって教員の長時間労働を放置して良いことにはならないはずです。
学校で勤務時間外の電話対応を減らすために、どうすればいいか?
ここで目指すべきことは、以下の2つだと思います。
- 教員の負担軽減
- 子供の安全・成長(密な連絡)
で、
- ①留守番電話の設置
- ②メールやLINEでの連絡
が必要だと思います。
まず、①留守番電話の設置について。
これは必須だと思います。
教員も一人の人間ですので、長時間労働を緩和する方向に持っていくべきです。
そして留守番電話は、長時間労働の緩和に一定の効果がありますので、設置を進めるべきです。
- 「学校・教員はいつでも子供のことを考えてよ」
- 「長時間労働って言うけど、そんなの学校だけじゃなくて企業もだから」
という気持ちを周りの人が持つことは分かりますが、良い意味でドライにしないと教員が潰れてしまいます。
教員志望の人が減っている中で、このままにすると学校教育が崩壊しかねません。
しかし、留守番電話の設置だけでは、そもそも学校と保護者の間で連絡を取りづらいという問題は解消されていません。
引用:LINE@
そこで、②メールやLINEでの連絡です。
例えば学年ごとにメールアカウント・LINEアカウント(LINE@)を作り、勤務時間内の連絡はメール・LINEでもOKとすれば、
- 教員が、日中に保護者に電話をかけてもつながらない
- 保護者が、日中に教員に電話をかけてもつながらない
という問題はある程度解消されます。
LINE@とは、ビジネス目的で「1 対 多」のコミュニケーションも行うことができるLINEアカウント。
- 1 対 多 の連絡が可能なので、連絡網の必要はありません。
- 1 対 1 のトークも可能ですので、個別対応も可能です。
教員個人のメールアカウント・LINEアカウント(LINE@)にすると、
- 個人への負担集中
- 文面の不透明性(管理職・学年主任が管理しづらい)
が懸念されますが、学年で共有のアカウントにすればOKだと思います。
学年共有のアカウントが入っているタブレット端末を職員室に置いておけば、
- 誰かが気づいて、すぐに対応することもできますし、
- 必ずしも担任が対応する必要のないことは、副担任が対応するということもできます。
電話で直接話すことが必要な案件の場合は、電話に切り替えればOKです。
また、システム的に可能なのかは分かりませんが、全学年のアカウントを管理職が1つの端末で確認できるようにできれば、管理もしやすいと思います。
もちろん、学年共有のメールアカウント・LINEアカウント(LINE@)にも問題点はあるとは思いますが、
- 教員の負担軽減
- 子供の安全・成長(密な連絡)
を目指す上で、有効な方法だとは思います。
スマホなどを持っていない家庭に対しては、今まで通り電話で対応です。
学校の勤務時間外の電話対応のまとめ
以上、
学校の勤務時間外の電話対応
について書きました。
どうすれば、
- 教員の負担軽減
- 子供の安全・成長(密な連絡)
を両立できるのか?について、具体性をもって真剣に議論するべき時が来ていると思います。
今まで通りのことを続けていては、何も解決しません。
教員のなり手が激減して、未来の学校教育が崩壊しないことを願います。
もちお(@softenisuke)でした。
https://softtennis-blog.com/teacher-overtime
本を出版しました
「過去の僕のようになってほしくない」という思いを込めて、元教員の僕の具体的なノウハウをまとめた電子書籍を出版しました。
<目次>
- はじめに
- 第1章 長時間労働の理由
- 第2章 生産性を意識する
- 第3章 教員の仕事との向き合い方
- 第4章 スケジュール管理・タスク管理
- 第5章 作業環境を整える
- 第6章 教室環境を整える
- 第7章 メンタルを整える
- おわりに
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教育問題についての僕の意見
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