【進研ゼミ高校講座】2026年リニューアルで勝負をしかけてきた。が、果たして…?

2026年4月、進研ゼミ高校講座はこれまでの看板だった「紙の教材」と「添削指導」を完全に捨てる。
この記事では、進研ゼミ高校講座リニューアルの目的を僕なりに推測するとともに、進研ゼミ高校講座に果たして入会の価値があるのか?について、忖度なく僕の考えを書く。
進研ゼミ高校講座リニューアルの概要

2026年度からのリニューアルにより、進研ゼミ高校講座はざっくり以下のように変化する。
- 以前よりも「普通の高校生」向きの通信教育になった
- 紙の教材は廃止され、デジタル教材に一本化された
- 全教科の教材を使えるようになった
- 効果に疑問があった添削指導が廃止されてシンプルになった
- AIの活用により、高校生活の中での「普通の学習」に使いやすくなった
進研ゼミ高校講座リニューアルの目的
おそらく2つある。
1つ目は「普通の高校生と向き合う」という進研ゼミの宣言


これまでの進研ゼミ高校講座は、「難関大を目指す高校生」も「普通の高校生」もターゲットにしていて、すごく中途半端な存在だった。その結果おそらく、難関大を目指す層はZ会や東進へ流れ、進研ゼミ高校講座は苦戦を強いられていたはず。
そこで思い切ってリニューアルをしてきた。
「サービスのターゲットをもっとわかりやすくする」ために、多数派である「勉強に苦手意識がある高校生」あるいは「普通の生活を大事にする高校生」に寄り添おう!・・・という意思がヒシヒシと伝わってくる内容へと変化した。
ハイレベル層は難関大志望の高校生向けサービスの「エベレス」や「ルート」を使ってね、という感じ。
2つ目は「ムダを減らして利益率と利便性を上げる」という目的

進研ゼミといえば紙の教材を1ヶ月に1回、利用者の家に送るというサービスだったけど、「紙教材を家に送る」のにはものすごくコストがかかる。
今はデジタル教材を配信する時代だし、その方が効率的。
紙教材を廃止してデジタル教材に一本化することで利益率と利便性を上げ、ベネッセにとっても利用者にとっても双方良しにしたかったのだろう。
進研ゼミ高校講座の中身
では具体的に、リニューアル後の進研ゼミ高校講座はどのような内容となっているのか?
進研ゼミ高校講座のサービスの中身は、
- 普通の高校生と向き合う
- ムダを減らして利益率と利便性を上げる
という目的を達成するためのものとなっている。
紙の教材なし(廃止)

進研ゼミといえば、という紙の教材が完全に廃止される。これが一番大きな変化。すべての教材をスマホやタブレット、PCから利用する。
紙の教材には紙の教材の良さがあるとは思うけど、本屋に行けば紙の参考書はたくさんあるんだから、わざわざ進研ゼミのものを使わなくていいよね。
なにより、いつも持ち歩いているスマホやタブレットで、気になった時、勉強したいときにサクッと教材を見られる、というのは便利。
紙の教材を廃止しないでーっていう声もあるとは思うけど、このリニューアルはいいことだと思う。紙の教材をどうしても使いたい人は本屋で買ってくれ。

あと地味に良いのは、進研ゼミの専用タブレットを使わなければいけない、という縛りがないこと。自分の電子端末を利用できるので、専用タブレットを購入する追加費用がかからない。
その反面、自分のデバイスの中のいろんなアプリの誘惑に負けないようにしなければいけない。これが難しい。
通学中にスマホで進研ゼミの教材を使うのは仕方ないとして、自宅でがっつり勉強するときは、誘惑の多いスマホじゃなくて余計なアプリを削除したタブレットかPCを使う方がいいとは思う。
その代わり全教科の教材を利用できる

紙の教材が廃止された代わりに、全教科の教材をフル活用できるようになった。
わざわざ1科目ずつの課金システムにしていたのは、たくさんの教科のテキストを郵送するのが大変だったから。進研ゼミの利用者全員に全教科のテキストをドサっと送るのは、コスト的にベネッセは嫌だし、送られる方も迷惑。
でもデジタル配信だったら、郵送費がかからないし部屋で山積みになって邪魔にもならない。だったら全教科の教材を利用できるようにしてあげてもいいよね!って感じだと思う。
全教科のコンテンツを使えるというのは、定期テストに向けていろんな科目の勉強をしなければいけない「普通の高校生」にとって助かる仕様。わざわざマイナー教科や自分にとってそんなに重要ではない教科の参考書を買う必要がなくなる。
AIがいろいろやってくれる

今回リニューアルされる進研ゼミ高校講座の目玉は「独自AI」の活用。具体的なサービス内容は以下の通り。
- わからないことがあったら、写真を撮って質問する→AIが解き方を解説してくれる
- テスト範囲(学校の定期テスト範囲表など)を写真に撮る→テスト対策問題を自動生成してくれる
- 中学5教科+高校7教科24科目に対応した授業動画、AI演習(数学には全演習問題に解き方解説動画がある)
普通の高校生が勉強している時の「困ったなあ」を解消してくれる。気楽に使えて非常に便利だと思う。わざわざベネッセの「独自AI」を使う必要あるの?ChatGPTやGeminiでいいんじゃないの?という疑問に対する僕の考えは、記事の後半で書いた。
授業動画を見放題

AIがいろいろやってくれるだけでなく、中学5教科+高校7教科24科目に対応した授業動画を利用することもできる。
授業動画でインプットしつつ、わからないことがあったらAIに質問して理解を深める、という使い方が基本になると思う。
レベル選択なし(廃止)

今回のリニューアルで、今までの「レベル別」「志望大別」という枠組みを、あえて撤廃するという大きな決断が下された。レベルや志望校に応じて値段が変わるということはなく、サービスを完全に一本化。
それを象徴するのが、高校生向けの公式サイトへの「しまじろう」の登場。久しぶりに見た。公式サイトの雰囲気が柔らかい。しまじろうって幼稚園生や小学生向けのチャレンジで出てくるキャラクターだよね。
このことからも、リニューアル後の進研ゼミ高校講座が、「難関大を目指す受験ガチ勢」ではなく、多数派である「勉強に苦手意識がある高校生」あるいは「普通の生活を大事にする高校生」に寄り添おう!という強い意思を持っていることがわかる。

ただ、とは言っても学力や志望大に応じたカスタマイズを完全に廃止したわけでない。学年・進度・レベルに合わせた教材が適宜配信される仕様になっている。
それに、ベネッセは難関大志望の高校生向けに「エベレス」や「ルート」というサービスも用意している。ゴリゴリ勉強したい人はこちらを利用してね、って感じ。
ちなみにオンラインライブ授業に参加できる「エベレス」に申し込むと「進研ゼミ高校講座」のサービスも利用できる。「エベレス」は「進研ゼミ高校講座」の上位モデル。
添削指導なし(廃止)

あと大きな変化として、紙の教材だけでなく、進研ゼミの看板サービスとも言える添削指導も廃止された。
これは思い切ったなあ・・と思ったけど、僕は結構いい決断だと思っている。
というのも、月に数回程度の添削指導(しかも提出から返却までタイムラグあり)では大して学力は伸びないんじゃない?って正直思っていたから。
生徒にとっては「面倒で手をつけなかった添削課題が山積みになり、進研ゼミのことを考えたくなくなる」という悪影響があるし、ベネッセにとっては「たいして学力向上に寄与しないのに、サービス維持にはものすごくコストがかかる」という悪影響がある。
双方良し、ではなく双方悪し、だったのが添削指導。廃止しても問題ないし、むしろもっと早く廃止するべきだった。

もしどうしても添削指導をしてほしかったら、学校の先生にお願いした方がいい。無料だし。学校の先生なら、その場で「これってどういう意図で書いたの?」って質問してくれて、自分に合った良いアドバイスがもらえる。しかもリアルタイムで。
学校の先生に頼むのは嫌なんだよね・・・っていう人は、添削指導を看板サービスに掲げているZ会に申し込もう。
勉強するとポイントが貯まる

リニューアルされた「進研ゼミ高校講座」には、勉強で貯めたポイントをAmazonギフトカード・PayPayポイントに換金できる、というシステムが導入された。月平均で100円分貯まるらしい。
以前は添削指導を提出すると努力賞ポイントがもらえて、そのポイントを(高校生にとってはしょぼい)景品と交換できるっていう健全な仕組みだったけど、リニューアル後は換金できるポイントというどストレートな施策に変わった。
正直、この仕組みについて僕は懐疑的。
勉強のやる気が出るようにしよう!っていうベネッセの工夫だとは思うけれど、月平均100円分って、やる気が出るにはしょぼい金額で、子供騙し感がすごい。
なにより、こういう金銭的な報酬ではなく、もっと本質的な「勉強したくなる!」という好奇心を煽る工夫をしてほしかった。教材を圧倒的に面白くするとか。
進研ゼミ高校講座に価値はあるか?

では、進研ゼミ高校講座に入会の価値はあるのか?
7教科24科目セットで、月額約10,000円。進研ゼミ高校講座に、この値段分の価値があるのか?
そもそも通信教育とは
そもそも通信教育の最大の価値は「適切な教材を適切なタイミングで生徒に届ける」ことにより、「いま最も取り組むべき学習内容・教材を選ぶ手間がかからなくなる」ことにある。
授業を受ける(=サービスを利用する)ためにわざわざ通学したり、教材を選ぶためにわざわざ比較検討したりする手間をかける必要がないのが通信教育のいいところ。
月額10,000円というお金は、この手間の削減に対して支払うもの。
もちろん提供される教材の質はどうか?という点も重要だけど、全国の生徒向けに展開するサービスの授業動画なので、一定のクオリティは担保されているはず。教育業界最大手のベネッセのサービスだし。
少なくとも、学校の教員の授業よりは品質のブレが少ないはず。学校の教員は忙しいし、正直言って当たり外れがある。わかりにくい授業も多い。僕自身、教員の時に「今回の授業むっちゃわかりにくかったなあ・・・生徒に申し訳ないわ・・・」って思っていたから間違いない。
通信教育としては十分

進研ゼミ高校講座に申し込むと、月額10,000円の対価として、ベネッセが用意した一定のクオリティが担保された質の担保された学習コンテンツを利用できる。もちろん、超難関大を目指す人向けのトップレベルの講師の授業のような超高品質なものではないかもしれないけれど、十分にわかりやすい授業が提供されているだろう。
今はYouTubeで無料で授業動画を見られるじゃないか、と思うかもしれない。
でも、YouTubeに投稿されている動画は玉石混交。再生数が多いからと言って、クオリティが高いわけでもないし。いい授業動画を探すのは本当に大変。
一定のクオリティが担保された授業動画を見つける手間がかからない、というところに(特に大手の)通信教育の価値がある。そして進研ゼミはその価値を十分に提供できている。イマイチな部分があったら、教育業界を牛耳っているその莫大な資金力で素早く改善してくれるはず。この安心感も大手のサービスのいいところ。
進研ゼミ高校講座は全教科セットで月額10,000円。この値段は他社の通信教育とほぼ横並び。適正価格と言える。
スタディサプリとの価格差は適正【自分でできる人はスタサプで十分】
授業動画を提供する他社サービスに、スタディサプリがある。スタディサプリは月額約2,000円と、かなり安い。
が、スタディサプリは「授業動画を全部置いておくから自由に使っていいよ」というサービスであり、演習問題を提示してくれたりする、といった「適切な教材を適切なタイミングで生徒に届けてくれる」という機能が弱い。スタディサプリは自分の意志で勉強できる、自律性のあるハイレベルな高校生向けのサービスだというのが僕の考え。
【スタディサプリ高校】使いこなすのは難しい。強い意志で主体的に勉強できる人向け。
一方、進研ゼミ高校講座はスタディサプリに比べて、「適切な教材を適切なタイミングで生徒に届けてくれる」という機能が充実している。スタディサプリとの差額の8,000円はここに払うという感じ。
この差額8,000円は、自分で必要に応じて適切に教材を選んで自分の意志で勉強できる人にとっては割高だと思う。そういう人はスタディサプリで十分。なんならスタサプすら利用せず自学自習すればいいじゃんって思う。通信教育はあくまで自分の学習をサポートする補助教材なんだし。自分でできるなら必要ない。
とは言っても、なかなか勉強を自分一人でやるのはキツイよね・・・ってのが現実。サポートしてほしい、という人にとっては、スタサプとの差額の8,000円は適正価格だと僕は思う。進研ゼミには、スタディサプリにはない以下の機能もあるし。
超お得!かどうかは「独自AI」の出来にかかっている

今回リニューアルされる進研ゼミ高校講座の目玉は「独自AI」の活用。この「独自AI」の出来が良ければ月額10,000円は安い!ってなるし、出来がイマイチだったら月額10,000円はまあ妥当かな、って感じ。
そもそも今は無料で生成AI(ChatGPT、Geminiなど)を使えるんだから、わざわざ進研ゼミのAIをお金を払って使う必要ないのでは?って思うかもしれない。
でも、おそらくこの「独自AI」は、進研ゼミがこれまで開発してきた教材を全部学習させて、過去の高校生の学習データも活用して、「高校の勉強」に超特化させた、教育産業の最大手のベネッセにしか作れないAIなはず。
って思っていたら、そんなようなことが公式ページに書いてあった。
進研ゼミ約55年分の知見を学習させた独自AIで、高い精度で回答ができます。
2025年1月実施の大学入学共通テストの数学問題をつかった検証では、「数学I・数学A」で92/100点、「数学Ⅱ・数学B・数学C」で115/116点の得点。合計得点率が95.8%でした。
AIの特性上、正確でない解答・解説が出力される場合はあります。回答内容を十分に確認し、慎重にご利用ください。誤った解答・解説が表示された場合は、お手数ですが、解説の最後にある評価アンケートより、コメントをお送りください。
進研ゼミ高校講座公式ページ
この「独自AI」を利用できることには、かなり価値があると思う。無料で使えるChatGPTやGeminiには無理。
とはいえ、このAIの出来はまだ未知数。もしかしたら使い勝手はそんなに良くないかもしれない。
でも「独自AI」の不完全な部分は、あのベネッセならどんどん改善していってくれるはず。長期的に見れば心配はないとは思う。それに、もし使ってみてイマイチだと感じたらすぐに退会すればいい(最短2ヶ月で退会できる)。
「独自AI」の実力に関しては実際に使ってみないとわからないので、実際に使ってみて追記したい。
「普通の高校生」に必要なものは、やる気の刺激

あと僕が個人的に注目しているのは、勉強したくなるような、好奇心を刺激する面白い教材になっているか?ということ。
そもそも、強制力なしに自分から勉強できる人は、すでに上位層。通信教育の最大の弱点は強制力が働かないところで、塾や家庭教師と違って対人のプレッシャーやスケジュールの強制がないので、自分で「勉強しよう」と決意しなければいけない。これが難しい。
自分で勉強する力が養われていく、というのが実は通信教育のいいところではあるんだけど、学習習慣が身について軌道に乗るまでに苦労する人は多いと思う。
その意味で、自分から勉強したくなるような、好奇心を刺激する面白い教材になっているか?は通信教育の最大のポイント。この点について、新しい進研ゼミ高校講座がどうなっているのか?については、実際に使ってみて追記したい。
まとめ
いま最も取り組むべき学習内容・教材を選ぶ手間がかからなくなる。
「進研ゼミがこれまで開発してきた教材を全部学習させて、過去の高校生の学習データも活用して、高校の勉強に超特化させた、教育産業の最大手のベネッセにしか作れないAI」を利用できる。
これらの得られる価値に対して、7教科24科目セットで月額約10,000円は決して高くない。適正価格〜ちょい安いくらいだと思う。
ただし、通信教育はあくまで自分の学習をサポートする補助教材。自分でできるならそもそも必要ない。
→進研ゼミ高校講座(公式)


