「簿記をやってるけど、償却原価法がよくわからん!なんでこうやって解くのかわからない!暗記するしかない!」っていう人(商業科の高校生・商学部の大学生)向けに、
- 買入償還とは何なのか?
- 社債償還益・社債償還損とは?
- 社債の買入償還に関する問題の解き方
について説明します。
そもそも簿記とは?
会社の財務状況を報告するための決算書を作る作業のこと。
財務状況=どれくらいお金を持っているか?どれくらいお金を使ったか?など
なんで決算書を作るのか?
会社は毎年、「1年間の活動はこんな感じでしたよ!今の状況はこんな感じですよ!」ってのを報告しなきゃいけないからです。
ちゃんと正確に報告をしないと、
- 税務署から「オマエ、納める税金をチョロまかしてるんじゃねえだろうな」ってニラまれるし、
- お金を貸してくれる人・お金をくれる人が「この会社にお金を渡しても大丈夫だ!」って判断できません。
買入償還とは?
会社がお金を借りる時に発行した債券(「10年後に¥40,000,000返します!」って書かれた証明書)を買い戻してお金を返すこと。
例えば、A企業が
- 額面総額 ¥40,000,000
- 償還期限 10年
の社債を発行してお金を借りた場合、A企業は債券を持っている人に対して10年後に¥40,000,000支払わなければいけないわけですが、
10年経つ前に(=途中で)「もうお金を返せるから、お金を払って社債をなかったことにしちゃえ!」ってことでお金を払って社債を買い入れる。
これが買入償還です。
買入償還すると得したり損したりする
①利払いがなくなる
例えば
- 額面総額 ¥40,000,000
- 償還期限 10年
- 利払いは年2回で小切手を振り出して行う(利率は年6%)
という社債だった場合、買入償還をして社債をなかったことにすれば、それ以降は毎年2回の利払いをしなくて済むことになります。
例えば発行後5年目の初めに買入償還をする場合、4年目まで(2回×4年=合計8回)の利払いまででOKってことです。
②社債償還益・社債償還損が生じる
例えば
- 額面総額 ¥40,000,000
- 償還期限 10年
- 利払いは年2回で小切手を振り出して行う(利率は年6%)
- 払込金額 ¥100につき¥97
という社債で、発行5年目の初頭に、額面総額¥40,000,000を¥100につき¥98で買入償還した場合を考えてみます。
「もうお金を返せるから、お金を払って社債をなかったことにしちゃえ!」ってことですね。
払込金額¥100につき¥97とは?
「額面総額¥40,000,000」の社債を、¥40,000,000のままじゃなくてちょっと割引して売ったよ!ってことです(割引して売ることで社債が売れやすくなるから、だと思えばOKです。社債を発行する会社はとにかくお金が欲しいから、割引してでも売りたいわけです。)。
んで、計算すると、¥40,000,000÷100×97=¥38,800,000
つまり社債を発行した会社は¥38,800,000受け取った!ということになります。
割引して発行したので会社は損している!(→償却原価法)
会社は社債を発行することで、
- ¥38,800,000借りて
- 10年後に¥40,000,000返す(償還する)
ことになりました。割引して売った結果、発行時に借りた金額と10年後に返す金額にズレが生じることになったのです。
償還期限は10年間で、10年間にわたって¥1,200,000の利息を負ったと解釈した方が実態に合っているので、償却原価法の考え方に基づいて、
¥1,200,000÷10=¥120,000が毎年の社債利息だ!って決算書に書くことになります。
5年目初頭の社債(借金)の額は?
以上のことをまとめると、
- 社債発行時に¥38,800,000借りた
- 毎年¥120,000の利息が積み重なる(→これが10年続く)
ということになります。
つまり、5年目初頭(4年が終わった段階)での社債の額(=借りたお金の額)は、
¥38,800,000+¥120,000×4=¥39,280,000
と見なすことができます。
※ちなみに償還期限の10年後の社債の額(=借りたお金の額)は、
¥38,800,000+¥120,000×10=¥40,000,000
です。償還期限の10年後に返す金額(額面総額)¥40,000,000と一致します。
額面総額¥40,000,000を¥100につき¥98で買入償還とは?
¥100につき¥98払って、「社債をなかったことにしちゃえ!」ってことにしました。
払った金額は、
¥40,000,000を÷100×98=¥39,200,000
です。
社債償還益が生じた
つまり、5年目初頭に¥39,200,000払って「¥39,280,000」の借金をチャラにできた!ということです。
これって、
¥39,280,000-¥39,200,000=¥80,000
得した(=利益が出た)ってことですよね。
これが社債償還益です。(※もし損した場合は、社債償還損と表現します)
ってことで、最後に練習問題に即して説明します。
社債の買入償還に関する問題の解き方
問題
A会社は下記の条件で社債を平成○年4月1日に発行して、全額の払い込みを受け、払込金は当座預金とした。
発行条件
- 額面総額 ¥40,000,000
- 償還期限 10年
- 利払いは年2回で小切手を振り出して行う(利率は年6%)
- 払込金額 ¥100につき¥97
発行5年目の初頭に、額面総額のうち¥10,000,000を¥100につき¥98で買入償還し、小切手を振り出して支払った時の
(ア)振り出した小切手の額
(イ)買入償還した社債の償却原価
(ウ)社債償還益の額
(ア)振り出した小切手の額
¥10,000,000÷100×98=¥9,800,000【答】
¥9,800,000で買入償還をしたってこと。
(イ)買入償還した社債の償却原価
5年目初頭(4年が終わった段階)での社債の額(=借りたお金の額)は、
¥38,800,000+¥120,000×4=¥39,280,000
と見なすことができます。
買入償還したのは社債全体の4分の1なので、5年目初頭での社債(額面¥10,000,000分)の額は、
¥39,280,000÷4=¥9,820,000【答】
と見なすことができます。
(ウ)社債償還益の額
5年目初頭に¥9,800,000払って「¥9,820,000」の借金をチャラにできた!っていうことなので、
¥9,820,000-¥9,800,000=¥20,000【答】
得した(=利益が出た)ってことになります。