「勉強したら何か買ってあげる」は勉強のやる気アップに効果がある?【動機づけメモ#2】
前回、やる気を「勉強するという行動を学習していくこと」として捉え直す話をしました。
今回は、勉強したら何か買ってあげる、というようなご褒美・報酬について。学んだことをまとめます。
結論
ご褒美(報酬)は「勉強という行動を全くしない初期段階」においてはそれなりに効果的です。
が、すでにある程度自分で勉強するようになっている段階で報酬を出すと、逆効果になることがあるようです。
報酬が効くのは「自然には起きにくい」行動
報酬というのは、その行動が自然な状態ではなかなか生じない(生起確率が低い)場合に、有効に機能するもののようです。
これがよくわかる例が、動物の調教です。
イルカショーの例
イルカショーで、イルカが高いところにある風船にタッチしたり、輪っかをくぐったりしますよね。
あれ、どうやって学ばせているんだろう?って気になったことがある人は少なくないはずが、どうやら「報酬」の仕組みがうまく使われているようです。
普通に生きているイルカが、自分から垂直に大きくジャンプするように飛び出す、なんてことは通常しません。何もしなければ、自発的にはやらない行動です。
では、トレーナーはどうやってあの複雑な行動を学習させているのか?というと、以下のような手順をとるようです。
- 行動をじっと観察する:まずイルカを自由に泳がせ、トレーナーはその様子をじっと観察する。
- 望ましい行動の瞬間に合図と報酬を出す:イルカが偶然、望んでいる行動に近いことをした時(たとえば自分でジャンプした時)に、その瞬間ホイッスルを鳴らして、すぐに魚(ご褒美)を与える。
- 基準を少しずつ引き上げる:これを繰り返すと、イルカの中で「ジャンプする=音が鳴る=魚がもらえる」という結びつきが生まれる。慣れてきたら、今度は「より高く飛んだ瞬間」だけに音を鳴らして魚を与えるようにし、徐々に目標の高さまで行動を引き上げていく。
ここで大事なのは、イルカが絶対にやらない行動をゼロから作り出しているのではなく、イルカがもともとたまにやる行動を、報酬によって「引き出し」「頻度を上げている」に過ぎないということです。
ジャンプや水面での遊び自体は、頻度こそ少ないもののイルカがもともと持っている自然な行動のレパートリーのようです。トレーナーは、イルカが本来持っているけれど普段は滅多にやらない行動を、報酬を使ってうまく「引き出し、定着させている」に過ぎません。
イルカが絶対にやらない行動を、この方法で学習させることはできません。
人間の勉強に当てはめると
人間の「学ぶ」「勉強する」という行動も、これと同じように捉えられそうです。
学ぶという行動は、人間が自然に持っている行動です。勉強が嫌いな人、あまりやらない人でも、日々何かしら学びながら生きています。頻度の違いはあっても、人間という生き物が持っている行動のひとつです。
しかし、「机に向かって教科書を開く」といった特定の勉強行動は、放っておくと自発的に起こる確率(生起確率)が極めて低い状態にあります。
そこで、報酬を使う。
「机に向かって教科書を開く」というレアな行動に対して報酬を与えることで、その行動を引き出し、定着させる(頻度を上げていく)ことができる、と考えられます。
ただし、注意点があります。
報酬が存在することが当たり前になってしまうと、「報酬をもらえるからやる」という状態になってしまいがち・・・だそうです。「楽しいからやる」ではなく「もらえるからやる」に置き換わってしまう可能性があるということ。
まとめ
以上を踏まえると、報酬は「勉強という行動を定着させる最初の段階」で使うのが良さそうです。まだ行動が起きていない段階で、それを引き出すために使う。
行動がある程度自分のものになってきたら、徐々に報酬を減らして、外していく。
ご褒美は万能の特効薬ではなく、あくまで「最初の行動のきっかけを作るための限定的なツール」として捉えることが大切なのでしょう。






