『日本史の論点』レビュー:日本史の実力だけでなく思考力も伸びる参考書
今回は、『日本史の論点 論述力を鍛えるトピック60』という日本史の参考書(問題集)のレビューをします!
『日本史の論点』はどんな本?
値段 | 約1,100円 |
著者 | 塚原哲也、鈴木和裕、高橋哲 |
出版社 | 駿台文庫 |
出版年 | 2018年 |
もちおのおすすめ度 | ★★★★☆ |
駿台の日本史講師の塚原哲也さんが中心となって作った参考書です。
『日本史の論点』は、昔は学校関係者しか手に入らなかった参考書で、市販されるのを待望する声が多かったのですが、
とうとう2018年に市販化されました。
対象レベル
易しいか難しいかで言ったら、難しいタイプの参考書です。中級者~上級者向けです。
この本を買おうか悩む前に、まず「日本史でどれだけ実力をつけたいのか?」を考えるのがおすすめ。
- 「丸暗記で良いから、高い点数を取りたい」って思った人には向きません
- 逆に「しっかりと日本の歴史について理解したい」って思った人にはかなり役立つ参考書です
早慶受験者へ:「早稲田や慶応は丸暗記でも大丈夫って聞いたことあるんだけど…」って思うかもしません。が、そもそも丸暗記で大丈夫ってのは誤解で、早稲田や慶応も日本史についてしっかりと理解することが必要です。論述問題が出なかったとしても、『日本史の論点』をやることで日本史の理解が深まりますので、十分役に立ちます!
表面的な理解から本質的な理解へと導いてくれる本
一つの内容に対して、一つの見方をするだけではなくいろんな角度から見る参考書。
日本史の出来事を様々な角度からとらえて解説してくれるので、本質的な理解につながります。
例えば「高度経済成長」について考えてみます。
教科書をただ読むだけだったり問題集をただ解くだけだったりして、特に意識をせずに勉強すると、
出来事を一つの見方でしかとらえない。。
ということが起こりがちです。
例えば「高度経済成長」なら、
- 「特徴(内容)」は理解したけど
- 「理由」と「結果」は理解していない
ってことになりがち。
しかし『日本史の論点』では(p.155~p.158)、「高度経済成長」について3つの角度から考える構成がとられています。
- 論点1)1950年代半ばに高度経済成長が始まったおもな要因は何か
- 論点2)高度経済成長期における重化学工業の発達を1930年代と対比せよ
- 論点3)高度経済成長にともなって国民生活はどのように変化したか
「むずかしい…!」って思うかもしれませんが、「基礎 = 簡単」っていう訳ではありません。基礎をしっかりと身につけるのは結構大変です。でも、しっかりと理解して身につければ応用のきく武器になります。
上の3つの角度は、理由・内容・結果の3つに分かれています。
- 論点1)高度経済成長が始まった理由
- 論点2)高度経済成長の特徴(内容)
- 論点3)高度経済成長の影響(結果)
理由・内容・結果って、出来事をとらえる時に普通に考える内容ですよね。
例えば「●●さんのことが好きだから告白した」という出来事も、これら3つの視点でとらえることができます。
- ●●さんのことを好きになった理由
- 告白の内容
- 告白した結果、どうなったか
出来事についてしっかりと理解するためには、いろんな角度から見ることが重要。
『日本史の論点』はその手助けをしてくれる良い参考書です!
『日本史の論点』は60個の項目(トピック)それぞれに対して、2つ以上の角度から解説してくれています。本質的な理解に導いてくれる参考書。
実は教科書もいろんな角度から書いてあるんですけど、それが読み取りづらかったりします。ですが、『日本史の論点』は、日本史の理解を深めるために必要な「論点」(角度)を整理して示してくれているので、スゴイ本なんです!
物事のとらえ方を学べる本
もし「もう試験直前で丸暗記に頼るしかない」っていう状況だったら、『日本史の論点』は消化不良で終わってしまう可能性があります。
ただ、少しでも時間があるのならやった方が良い!っていう参考書です。『日本史の論点』を通して、物事のとらえ方を学べるからです。
物事をとらえる時は、いろんな角度からとらえようとする姿勢が大事です。
例えば、●●さんという人間がいるとします。その●●さんは、その時々によって雰囲気や表情が変わりますよね。
- 部活をやっている時
- 授業を受けている時
- 男友達と話している時
- 女友達と話している時
- 一人でいる時
このようにいろんな角度から●●さんをとらえることで、●●さんを本当に理解したと言えるようになると思います。
もし、●●さんについて知りたい時に、
「●●さんは男友達と話をしている時、いつも笑顔だ!だから●●さんはすごく良い人なはずだ!」
と、一つの角度からだけで(一面的に)とらえてしまうと、
女友達といる時は悪口を言いまくっているという●●さんの側面を理解しないまま、●●さんについて勘違いしてしまう可能性があります。
『日本史の論点』は、日本史を通していろんな角度から物事をとらえる訓練をしてくれる本だと思います。
いろんな角度から物事をとらえる力は他の教科にも必ず活きてきます。
少しでも時間があるのなら、『日本史の論点』をやる価値は大アリ。
※「1回だけやって終わり」っていう取り組み方だと、効果を発揮しない参考書かもしれません。
ちなみに、東大や京大の入試問題を突破するためには、「いろんな角度から物事をとらえる」ということが必須です。『日本史の論点』は東大・京大受験者の必需品になるんじゃないかな
参考:僕が東大合格のために使った日本史の参考書・問題集【地理歴史】
論述力を高めてくれる本
『日本史の論点』は論述力を高めてくれる本です。全部で145個の論点(問題)が載っています。
選択肢で答える問題ではなく、全て記述式なので、時間をかけてしっかりと取り組めば文章を書く力が圧倒的に伸びると思います。
一つ一つの論点(問題)に対して、書き方を丁寧に教えてくれるわけではないのが『日本史の論点』の唯一の弱点ではありますが…
「要約せよ」という課題まであるので、本気で取り組んだらかなりの実力がつくはずです。
口コミ・評判
評価は高め!
同じタイトルの新書『日本史の論点 邪馬台国から象徴天皇制まで』(中公新書)があって、Twitterでの評価を見つけるのが少し大変でした。。。
京都駅前の大垣書店に複数刷陳列されていましたので、受験生の皆さんのお邪魔にならないかと心配しつつも、1冊いただいてまいりました。『日本史の論点』は歴史の勉強をしつつ、知らず知らずのうちに読解力まで身についてしまう、恐ろしい学習参考書です。
日本史の論点市販化とか、普通に高校日本史教育を活性化する
『日本史の論点』の使い方
受験本番まで時間があるなら、下記のようにじっくりやると かなり実力がつくと思います。
1周目
- 目次(トピック一覧)の「論点」に対して、何も見ないで論述してみる。
- 教科書などで調べて、論述を修正して、自分なりの答案を完成させる。
- 解説と別冊の解答例を見て、自分の答案の良かった部分・足りなかった部分を確認する。
- 「課題」に取り組む。
2周目以降
(①~④を、ひたすらくり返す)
ただ、実力がつく反面、ものすごく時間がかかります。
時間があまりない人は下記のようにやると良いと思います。
1周目
- 『日本史の論点』を最初から最後まで読む(教科書と見比べながら)。
2周目
- 目次(トピック一覧)の「論点」に対して、頭の中で答案を考える。
- 解説と別冊の解答例を見て、自分の答案の良かった部分・足りなかった部分を確認する。
3周目
- 目次(トピック一覧)の「論点」に対して、何も見ないで論述してみる。
- 解説と別冊の解答例を見て、自分の答案の良かった部分・足りなかった部分を確認する。
ただ読むだけでは不十分です。
「目次(トピック一覧)」を見て、論述してみることが大切だと思います。
いろんな学習教材についてはこちら
日本史の参考書・問題集
日本史のおすすめ参考書・問題集を東大卒元教員が紹介【大学受験】
中学社会の参考書・問題集
中学社会の参考書・問題集を東大卒の元教員が紹介【おすすめ:高校受験】
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歴史の勉強法
社会科の本質を解説するブログ・YouTubeはこちら
社会科(歴史・地理・公民)の内容について、本質的な部分をわかりやすく解説するチャンネルです。
【方針】
- 「つまりどういうことなの?」「なんでこれが大事なの?」ってのを解説する(木で例えると、葉っぱの部分じゃなくて幹の部分を説明する感じ)
- 細かい内容は省略する
- 社会科は人間の営みに関する学問なので、当事者のことをちゃんとイメージする(人間の心理も考える)
- 「社会は暗記すればOK!わからなくても覚えりゃいい!」っていう人を減らす
【対象】
- 中学生〜大人(本質的な部分を解説しているので、中学社会にも高校社会にも対応しているはず!)
※細かい内容はあまり扱わないので、細かくてマニアックな内容を求めている人は満足できないと思います。マニアックさを求めている人は、別のチャンネルを観るのがおすすめです。